外来経験者でも、そのまま在宅レセプトを任せない|医療事務を育てるときに決めたいこと

公開日 MINORAS 医療実務チーム
外来経験者でも、そのまま在宅レセプトを任せない|医療事務を育てるときに決めたいこと

外来のレセプト経験がある医療事務スタッフを採用できたら、在宅の請求もすぐ任せてよいのでしょうか。

結論からいうと、外来レセプトの経験があっても、在宅レセプトは別の考え方を学んでから任せる必要があります。 共通する基礎はありますが、在宅では1か月の診療経過を時系列で見て判断する項目、往診と定期訪問の区別、多くの医学管理料、算定要件として確認すべき診療録の記載など、外来とは異なる確認軸があります。

  • 外来と在宅では、レセプトを確認する時間軸と算定の考え方が違う
  • 在宅では、往診・定期訪問・医学管理料・診療録の記載要件を追加で学ぶ必要がある
  • そのうえで、確認場所・相談ルート・判断記録まで院内でそろえる

本記事の情報基準日は2026年9月28日です。

外来レセプトと在宅レセプトは、共通点はあっても考え方が違う

外来は診療ごと、在宅は1か月の経過を見る場面が多い

外来では、診療日に行った診察・検査・処置などをその場で会計につなげるため、診療日ごとの確認が中心になりやすいです。

一方、在宅では、月内の訪問回数や患者の状態、医学管理の内容などを1か月の経過として時系列で確認してから算定区分を決める項目があります。たとえば在医総管・施医総管は月1回の医学管理料で、訪問回数や患者の状態、単一建物診療患者数など複数の条件を月単位で確認します。

厚生労働省「診療報酬の算定方法」

そのため、外来で「診療日の入力を正しく処理する」経験があっても、そのまま在宅の月次請求を任せられるとは限りません。

往診と定期訪問は、同じ「訪問」でも算定上の意味が違う

在宅では、計画的に行う訪問診療と、患者の求めに応じて行う往診を区別して確認します。

レセプト担当者には、単に「医師が患者宅へ行った」という事実だけでなく、その訪問がどの診療区分に当たるのかを診療録や院内運用から読み取る知識が必要です。

医学管理料と診療録の記載要件を知る必要がある

在宅医療では、在医総管・施医総管をはじめ、月単位で確認する医学管理料や加算が複数あります。

また、算定要件として診療録への記載や管理内容の確認が必要な項目もあります。請求データだけ整っていても、診療録側の記載要件まで確認できなければ、院内として適切な算定管理になりません。

令和8年度の点数表・施設基準・記載要領は、厚生労働省の改定ページで現行資料を確認できます。

厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」

だから「経験者だから教育なしで任せる」は避ける

外来経験は、患者情報の扱い、診療録の確認、レセコン操作など大きな土台になります。

ただし、在宅特有の時間軸、訪問区分、医学管理料、診療録の記載要件を共有せずに任せると、本人の経験だけでは判断できない場面が残ります。

最初に教えるべきなのは、在宅特有の違いと、そのうえでどこを確認し、迷ったら誰に確認するか?、判断をどこに残すかです。

最初に教えるのは、院内の情報がどこにあるか

電子カルテの中で見る場所をそろえる

最初の育成では、いきなり難しい算定判断から始めるより、院内の情報がどこにあるかをそろえます。

たとえば、

  • 患者の資格情報
  • 診療録
  • 処方・検査・処置の記録
  • 入退院などの患者情報
  • 医師への確認結果
  • 過去に院内で決めた判断ルール

が、どこに記録されているかを教えます。

同じ情報をスタッフごとに違う場所から探していると、確認時間も判断のばらつきも増えます。

「入力されている」と「確認できる」は別

電子カルテに記載があっても、請求担当者が意味を読み取れない内容は確認対象として扱います。

育成時には、「この欄に書いてあればOK」だけでなく、

  • 何を確認するために見るのか
  • 分からなければ誰へ聞くのか
  • 回答をどこへ残すのか

までセットにします。

次に教えるのは、一次資料へ戻る順番

院内マニュアルだけを正解にしない

院内マニュアルは大切ですが、診療報酬改定や疑義解釈によって古くなる可能性があります。

厚生労働省は、令和8年度診療報酬改定について、点数表、施設基準、記載要領などを公開しています。

厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」

また、請求方法については社会保険診療報酬支払基金が医療機関向けのオンライン請求情報やQ&Aを公開しています。

社会保険診療報酬支払基金「保険医療機関等に係るオンライン請求」

「分からなければネット検索」ではなく、院内でどの一次資料から確認するかを決めておくと、担当者ごとの検索結果に引っ張られにくくなります。

調べる順番を固定する

迷ったときに調べる順番(1 過去の判断やクリニックの算定方針、2 現行の告示・通知・記載要領、3 疑義解釈が出ていないか、4 院長や事務長に確認する)

論点ごとに確認する資料は異なりますが、確認の入口はそろえられます。

  1. 過去の判断やクリニックの算定方針を確認する
  2. 現行の告示・通知・記載要領を確認する
  3. 疑義解釈が出ていないか確認する
  4. それでも判断できなければ院長や事務長に確認する

この順番を教えると、経験が浅いスタッフでも「次に何をすればよいか」が分かります。

「分からない」を早く出せる仕組みを作る

質問できることも実務能力の一つ

育成中のスタッフが「分からない」と言いにくい環境では、推測で処理するリスクが高まります。

質問すること自体を問題にせず、質問の出し方をそろえます。

たとえば、

  • 対象の患者・診療日
  • 何を確認したいか
  • どの記録を見たか
  • どの一次資料まで確認したか
  • 何を判断してほしいか

をまとめてから相談する形です。

質問が整理されていれば、教える側の負担も小さくなります。

同じ質問が3回出たら、育成ではなく仕組みを見直す

同じ質問が何度も出る場合は、本人の理解だけでなく、院内ルールや情報の置き場所など仕組み側も確認します。

院内ルールが書かれていない、情報の置き場所が分かりにくい、一次資料の確認先が決まっていないなど、仕組み側に原因があることもあります。

繰り返し出る質問は、次のスタッフも迷う可能性があります。個別指導だけで終わらせず、院内ルールへ戻します。

繰り返す判断は算定ポリシーとして残す

算定ポリシーは「答え」だけでなく根拠を残す

MINORASでは、院内で繰り返す算定判断を「レセプトポリシー」として文書化する考え方を重視しています。

残したいのは「この場合はこうする」という答えだけではありません。

  • どのような場面のルールか
  • 何を確認するか
  • 根拠にした一次資料
  • 誰へ確認するか
  • いつ確認したルールか

まで残します。

こうしておくと、担当者が変わっても「前の人がそうしていたから」という理由だけで処理しにくくなります。

制度改定をまたいだら見直す

院内ルールには確認日を付けます。

診療報酬改定をまたいだときや、新しい疑義解釈が出たときは、そのルールが今も使えるかを再確認します。

厚生労働省は令和8年度の記載要領についても改正通知を公開しています。

厚生労働省「令和8年度診療報酬改定(令和8年4月以降の改正)」

「一度教えたから終わり」にせず、ルールの更新まで育成の一部にします。

1人に集中させず、確認できる体制を作る

できる人へ仕事を集めすぎない

経験のあるスタッフへ難しい判断を集めると、短期的には早く回ります。

一方で、他のスタッフが確認する機会を失い、担当者が休んだときに業務が止まりやすくなります。

育成中は、すべてを一人に任せるより、

  • 一次確認をする人
  • 難しい項目を確認する人
  • 最終的な判断をする人

を分ける方法もあります。

人数が少ない院でも、「誰に聞けばよいか」を決めるだけで違います。

答えを教えるより、考え方を一緒に確認する

修正点だけを伝えると、次に似たケースが出たときにまた質問が必要になります。

「なぜ確認が必要だったか」「どの資料に戻ったか」まで共有すると、次のケースへ応用しやすくなります。

育成を評価するときは、速度だけを見ない

最初は処理件数より、再現性を見る

育成直後に処理件数だけを見ると、質問せず早く処理するほうが評価されやすくなります。

しかし、在宅レセプトでは、分からないときに止まり、根拠を確認する行動も重要です。

最初は、

  • 確認すべき項目を拾えているか
  • 一次資料へ戻れているか
  • 不明点を適切に相談できているか
  • 判断理由を記録できているか
  • 同じミスを繰り返していないか

を見ます。

自走とは「誰にも聞かないこと」ではない

育成のゴールは、相談がゼロになることではありません。

通常の処理は自分で進め、例外や判断が必要な場面では早く相談できる状態が自走です。

この状態を作ると、院長やベテラン事務へ質問が集中しにくくなり、判断も院内へ残しやすくなります。

よくある質問

Q. 外来レセプト経験が長ければ、在宅の研修は不要ですか

外来での経験は大きな土台になります。ただし、在宅では確認する情報や制度上の論点が異なるため、自院の運用と在宅特有の確認軸を共有する研修は必要です。経験年数だけで任せる範囲を決めず、実際の確認手順を見ながら段階的に広げます。

Q. 新人には最初から診療報酬の本を読ませたほうがよいですか

体系的な学習は役立ちますが、最初は自院の情報の置き場所と、一次資料へ戻る順番を教えるほうが実務につながりやすくなります。学習した知識を、どの業務で使うかまで結びつけます。

Q. スタッフが質問ばかりする場合、育成が進んでいないのでしょうか

質問の数だけでは判断できません。質問が具体的になっているか、確認した資料を示せているか、同じ質問が減っているかを見るほうが、成長を確認しやすくなります。

本記事は2026年9月28日時点の情報です。

記載の内容は一般的な情報提供です。個別の医療機関における算定の可否は、届出の状況・患者の状態・院内の運用によって異なります。実際の請求にあたっては、必ず一次資料および管轄の審査支払機関の取扱いをご確認ください。

執筆・運営:MINORAS株式会社 今井 稔

在宅レセプトの育成を、個人の経験だけに頼らず院内の仕組みとして整えたい場合は、MINORASへお問い合わせください。

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MINORAS 医療実務チーム

在宅医療・訪問診療クリニックのレセプト業務を担当するチームです。算定、返戻・査定対応、月次点検の実務に携わりながら、院内で判断に迷いやすい場面を記事として整理しています。制度に関する記載は一次情報を確認し、医療実務責任者の確認を経て公開しています。