薬剤や検査を見て、「この傷病名で請求して大丈夫だろうか」と迷ったことはありませんか。
レセプトの病名チェックで最初にするのは、薬剤や検査に合わせて傷病名を足すことではありません。まず、傷病名と診療内容にずれがないかを見つけ、診療録と一次資料へ戻り、傷病名の判断が必要なら医師へ確認します。
- 薬剤は、傷病名だけでなく適応・投与量・投与日数まで確認する
- 検査は、傷病名の有無だけでなく、実施した理由や診療録の記載も見る
- 請求事務担当者だけで傷病名を決めない
本記事は2026年9月18日時点の公表資料に基づいています。
レセプトの病名チェックは「傷病名と診療内容の整合」を見る
社会保険診療報酬支払基金は、電子レセプトの審査事務で、傷病名と医薬品の関連性をチェックすると説明しています。
https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/gyomuflow/index.html
東京都医師会のレセプト点検の解説でも、提出前に病名が正しく記載されているか、病名と診療内容が合っているかを確認するとしています。
https://www.tokyo.med.or.jp/doctor/practicing_docs/general/01-13
つまり、見るべきなのは「病名欄に何か入っているか」だけではありません。実際に行った投薬・検査などの診療内容と、レセプトに記載された傷病名が整合しているかを確認します。
薬剤は「傷病名・適応・投与内容」の組み合わせを見る
支払基金の突合点検では、同一患者・同一診療月の医科レセプトと調剤レセプトを電子的に照合し、医科レセプトの傷病名と、調剤レセプトの医薬品について適応・投与量・投与日数を点検しています。
https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/tenken/totujyu_01.html
院内の点検でも、薬剤名を見てすぐに「病名が足りない」と決めず、次の順で確認すると整理しやすくなります。
- レセプト上の傷病名を確認する
- 処方・投薬の内容を確認する
- 医薬品の適応や投与内容と照らす
- 診療録に診断の根拠や経過があるかを見る
- 傷病名の判断が必要なら医師へ確認する
ここで大切なのは、請求を通すために傷病名を探すのではなく、実際の診療内容と傷病名が合っているかを確かめることです。
検査は「なぜ行ったか」を診療録まで戻って確認する
検査も、傷病名があるかないかだけで判断すると確認が止まりやすくなります。
東海北陸厚生局が掲載する「令和6年度に実施した個別指導において保険医療機関(医科)に改善を求めた主な指摘事項」では、結果が診療に反映されていない検査、段階を踏んでいない検査、必要以上に実施回数の多い検査などを不適切な例として挙げています。
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/000424609.pdf
検査の種類によって必要な記載や算定要件は異なりますが、院内点検では少なくとも次を確認します。
- どの症状・所見・疑いをもとに検査したのか
- 診療録に検査の必要性が読み取れる記載があるか
- その検査に必要な結果・所見の記載要件があるか
- レセプトの傷病名と診療録の内容にずれがないか
厚生労働省「保険診療の理解のために【医科】(令和8年度)」でも、検査項目によっては診療録やレセプトの摘要欄に記載すべき事項が定められていると説明しています。
https://www.mhlw.go.jp/content/001713152.pdf
検査名だけから傷病名を逆算するのではなく、診療録に戻って「なぜ実施したか」を確認するのが先です。
不一致を見つけたら3つの順番で確認する

薬剤や検査と傷病名にずれがありそうなときは、確認の順番を固定すると院内のやりとりを整理できます。
1. 確認対象を特定する
まず、どの薬剤・検査と、どの傷病名の組み合わせが気になるのかを特定します。「病名が少ない」という漠然とした見方ではなく、確認対象を1つに絞ります。
2. 診療録と一次資料で根拠を確認する
診療録の症状・所見・経過を確認し、必要に応じて点数表、通知、医薬品の適応などの一次資料へ戻ります。
厚生労働省の「『診療報酬請求書等の記載要領等について』等の一部改正について」(令和8年3月27日 保医発0327第2号)では、傷病名は原則として定められた傷病名を用い、傷病名コードに記載されたものを用いるよう示されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732127.pdf
3. 傷病名の判断は医師へ確認する
厚生労働省「保険診療の理解のために【医科】(令和8年度)」では、医学的に妥当適切な傷病名を主治医自らつけること、請求事務担当者が主治医に確認せず傷病名をつけることは厳に慎むよう示しています。
https://www.mhlw.go.jp/content/001713152.pdf
院内点検では、医療事務が不一致の候補と確認に必要な材料を整理し、傷病名の判断が必要になったら医師へ戻す流れにしておくと、役割を分けやすくなります。
病名を追加して帳尻を合わせない
不一致を見つけたときに、「この薬を使っているから、この病名を追加しよう」と請求上の都合だけで傷病名を増やすのは避ける必要があります。
中国四国厚生局は、検査・投薬等の査定を防ぐ目的で、医学的な診断根拠のない傷病名、いわゆるレセプト病名を付けることを不適切としています。傷病名だけでは請求内容の説明が不十分な場合には、摘要欄や症状詳記で補う考え方も示しています。
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/chugokushikoku/chousaka/000353162.pdf
どの方法で補うかは診療内容や請求項目によって変わるため、個別のケースは一次資料と院内記録を確認してください。
よくある質問
Q. 薬剤に対応する病名が見当たらないと、必ず査定されますか。
病名が見当たらないという一点だけでは、査定の可否を判断できません。支払基金は傷病名と医薬品の適応などを点検し、審査委員会で審査決定します。診療録と適応を確認してから判断してください。
Q. 医療事務が病名を追加してもよいですか。
請求事務担当者だけで傷病名を決める運用は避けます。不一致候補を見つけたら、診療録と根拠を整理し、主治医へ確認する流れにしてください。
Q. 検査の病名チェックでは何を見ますか。
傷病名だけではなく、検査を実施した理由や症状・所見、診療録の記載を確認します。検査項目によっては結果や所見の記載が算定要件になっているものもあるため、個別の可否は該当する一次資料まで確認してください。
本記事は2026年9月18日時点の告示・通知・公表資料に基づいています。
記載の内容は一般的な情報提供です。個別の医療機関における算定の可否は、届出の状況・患者の状態・院内の運用によって異なります。実際の請求にあたっては、必ず一次資料および管轄の審査支払機関の取扱いをご確認ください。
執筆・運営:MINORAS株式会社 今井 稔
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在宅医療・訪問診療クリニックのレセプト業務を担当するチームです。算定、返戻・査定対応、月次点検の実務に携わりながら、院内で判断に迷いやすい場面を記事として整理しています。制度に関する記載は一次情報を確認し、医療実務責任者の確認を経て公開しています。


