クリニック開業初月のレセプト請求|開業前に準備しておくこと

公開日 MINORAS 医療実務チーム
クリニック開業初月のレセプト請求|開業前に準備しておくこと

開業日が近づくと、内装や採用、電子カルテの準備に目が向きます。では、レセプト請求の準備はいつから始めればよいのでしょうか。

結論からいうと、初月のレセプト請求は「診療を始めてから準備する仕事」ではありません。保険医療機関の指定、オンライン資格確認、オンライン請求、必要な施設基準の届出、そして日々の診療録と算定の流れを、開業前からつないでおく必要があります。

  • 保険診療を行うには、あらかじめ保険医療機関の指定を受ける必要があります。
  • オンライン請求は、届出から設定・接続確認を経て開始するため、直前の準備では間に合わないことがあります。
  • 初回請求で慌てないためには、開業初日から「資格確認・診療録・算定・確認」の流れを決めておくことが重要です。

本記事の情報基準日は2026年9月21日です。

初月請求は「診療翌月10日」から逆算する

レセプトは、診療した月の内容をまとめて翌月に請求します。社会保険診療報酬支払基金は、電子レセプトを診療翌月10日までに提出すると案内しています。東京都国民健康保険団体連合会でも、オンライン請求は毎月10日までに請求確定する運用です。

たとえば月の途中で開業した場合でも、開業日から月末までに行った保険診療について、翌月の請求に向けた準備が必要になります。

そのため、開業後に「レセコンの設定をしよう」「オンライン請求の手続きをしよう」と動き始めるのでは遅い可能性があります。初回提出日から逆算して、開業前に請求経路まで確認しておくことが重要です。では、逆算したときに開業前までに何を整えるべきか、4つの準備から見ていきます。

開業前に整える4つの準備と請求環境

保険医療機関の指定

公的医療保険を使った診療を行うには、地方厚生(支)局長による保険医療機関の指定が必要です。関東信越厚生局「保険医療機関・保険薬局の指定申請」では、原則として指定日は毎月1日とされ、新規指定の申請締切も月ごとに設定されています。

開業日だけを先に決めるのではなく、「いつから保険診療を始めるのか」と指定申請のスケジュールを合わせて確認しておく必要があります。

オンライン資格確認

保険医療機関・薬局では、オンライン資格確認の導入が原則義務化されています。厚生労働省「オンライン資格確認について」では、2024年4月以降に新規指定を受ける医療機関向けの導入準備も案内されています。

訪問診療を行う医療機関では、院内の受付だけでなく、訪問先でどのように資格を確認するかも運用に落としておく必要があります。

オンライン請求

オンライン請求は、申請したその日から使えるわけではありません。支払基金「保険医療機関・保険薬局及び訪問看護に係るオンライン請求」では、毎月20日までに届出を取りまとめ、翌月15日までに設定情報等を送付し、設定・導通試験を経て届出の翌々月からオンライン請求を開始する流れが示されています。

開業直前に手続きを始めると、初月の請求スケジュールと合わない可能性があります。レセコンや回線の準備と合わせて、オンライン請求の開始時期を確認しておくことが必要です。

無料の送信用ソフトと有料の請求支援の違い

支払基金は、オンライン請求で使う送信用ソフトウェアを無償で配布しています。したがって、オンライン請求を行うために有料の「伝送ソフト」を必ず購入するわけではありません。

一方、有料の製品・サービスには、電子カルテやレセコンと同じ端末から請求できるようにするもの、回線切替を自動化するもの、毎月の請求操作を自動化するもの、VPN・初期設定・保守まで支援するものがあります。製品例として、レセボット、IP-Members®があります。

開業時は「無料か有料か」ではなく、誰が請求するか、専用端末を分けるか、操作や接続トラブルを院内で対応できるかで比較すると選びやすくなります。「伝送ソフト」という呼び方は製品ごとに含む範囲が異なるため、見積もりでは機能とサポート範囲を確認します。

算定する項目の施設基準

診療報酬には、届出が必要な施設基準があります。2026年度改定に対応した基本診療料・特掲診療料の届出様式は、関東信越厚生局から公開されています。

在宅医療では、どの体制を取り、どの項目を算定するのかによって確認すべき届出が変わります。「開業後に必要になったら出す」ではなく、開業時点で予定している診療内容と照らして整理しておくことが大切です。ここまでが開業前に整える制度・請求環境です。次に、開業後の毎日の診療を請求につなぐ運用を決めます。

開業初日から月末までに残しておくもの

初回請求をスムーズにするには、月末にまとめて確認するのではなく、診療した日から請求に必要な情報が残る運用にしておくことが重要です。

少なくとも、患者の資格情報、診療録、実施した診療内容、算定判断に必要な情報が、レセプトを作る担当者へつながる状態を作ります。

東京都医師会の「開業医のための保険診療の要点」でも、保険医は診療録を適切に記載し、請求事務担当者へ診療情報が適切に伝わっているか確認する必要があると整理されています。

ここはシステムを入れるだけでは決まりません。誰が入力し、誰が不明点を確認し、誰が最終的に請求内容を見るのかという役割分担まで決めておく必要があります。役割分担を決めたら、初回請求前にその流れが実際に動くかを一度通して確認します。

初回提出の前に、一度「通し」で確認する

MINORASでは、初回請求の前に一度、実際の流れを通して確認することをおすすめします。

確認したいのは、レセプトデータを作れるかだけではありません。

  • レセコンから請求データを出せるか
  • オンライン請求システムへ接続できるか
  • エラーや確認事項を誰が処理するか
  • 修正後に誰が請求確定を行うか
  • 提出した件数をどこで確認するか

支払基金では、設定後に導通試験を行い、確認試験も実施できます。東京都国保連「レセプトデータ送信について」でも、送信後にエラー等を確認し、請求確定を行う流れが示されています。

「本番の10日に初めて一連の操作をする」状態を避けることが、初月の負担を減らす一つの方法です。

レセプトチェックソフトは院内点検を補う

オンライン請求システムには受付・事務点検ASPがあります。それでも院内で専用のレセプトチェックソフトを使うのは、提出時のチェックとは別に、請求前の点検業務を効率化したい場面があるためです。

製品によっては、過去月を含む縦覧点検、突合点検、算定日や算定候補の確認、確認済み・承認依頼などの進捗管理、提出後の査定・返戻分析まで支援します。Mighty Checker EXはこうした機能を提供する製品の一例です。

開業時から必ず導入するものではありません。まず利用予定のレセコンでどこまで点検できるかを確認し、患者数、担当者の経験、複数人での確認の有無、査定・返戻分析まで院内で行いたいかを踏まえて判断します。ツールを選ぶ目的も、最終的には請求の流れを止めずに回すことです。

開業前に決めるべきなのは、担当者より「流れ」

開業前に作っておきたい流れ(診療、記録、点検、送信、確定の5つを矢印でつないだ流れ)

ここまでの準備を一言でまとめると、開業前に作っておきたいのは「レセプトを作れる状態」ではなく、「診療→記録→点検→送信→確定」までが一つにつながった流れです。

保険医療機関の指定、オンライン資格確認、オンライン請求、施設基準を先に整え、開業初日から請求に必要な情報を残し、初回提出前に一度通して確認します。無料・有料の請求支援やレセプトチェックソフトは、その流れを支えるために必要性を判断するものです。

誰が入力し、誰が不明点を確認し、誰が最終確認・請求確定を行うかまで決まっていれば、担当者や利用するツールが変わっても引き継ぎやすくなります。初月請求だけでなく、2か月目以降も同じ流れで回せる状態を開業前に作ることが、レセプト体制づくりの出発点です。

よくある質問

開業月の患者数が少なくても、レセプトの準備は必要ですか

患者数にかかわらず、保険診療を行って請求するのであれば、その診療内容をレセプトとして提出できる準備が必要です。患者数が少ない初月は、請求手順や役割分担を確認する機会として使う考え方もあります。

オンライン請求の手続きは、いつ始めればよいですか

支払基金の案内では、届出から設定情報等の到着、設定、導通試験を経てオンライン請求開始まで月をまたぐスケジュールが示されています。開業日が決まった段階で、レセコンベンダーとあわせて開始時期を確認するのが安全です。

施設基準の届出は、開業後でも間に合いますか

施設基準は項目ごとに要件や届出の扱いが異なります。算定開始時期に関わるため、開業時に算定予定の項目を整理し、管轄の地方厚生(支)局の最新案内で確認してください。

有料の伝送ソフト・請求支援サービスは必要ですか

必須ではありません。支払基金の送信用ソフトウェアは無償です。ただし、同じ端末での請求、回線切替や操作の自動化、VPN・設定・保守の支援などを求める場合は、有料サービスを比較する意味があります。担当者の経験と院内で対応できる範囲を基準に選びます。

レセプトチェックソフトは開業時から必要ですか

必須ではありません。まずレセコンの点検機能と院内の確認手順を確認します。過去月との比較、複数人での進捗管理、査定・返戻分析などを効率化したい場合は、専用ソフトが選択肢になります。

本記事は2026年9月21日時点の告示・通知・公的機関の案内に基づいています。

記載の内容は一般的な情報提供です。個別の医療機関における算定の可否は、届出の状況・患者の状態・院内の運用によって異なります。実際の請求にあたっては、必ず一次資料および管轄の審査支払機関の取扱いをご確認ください。

執筆・運営:MINORAS株式会社 今井 稔

在宅医療の開業準備では、レセコンを用意するだけでなく、誰が何を確認して初回請求までつなぐかを決めておく必要があります。開業前のレセプト体制についてもご相談いただけます。お問い合わせはこちらから。

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MINORAS 医療実務チーム

在宅医療・訪問診療クリニックのレセプト業務を担当するチームです。算定、返戻・査定対応、月次点検の実務に携わりながら、院内で判断に迷いやすい場面を記事として整理しています。制度に関する記載は一次情報を確認し、医療実務責任者の確認を経て公開しています。